影から恋する頑張りやさん。−耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳−

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)

 ぶっ飛んでますよね。書き方が。というか主人公が。ここまで堂々としたえろばかは珍しいと思われ。ブルマ●娘とか馬鹿じゃなかろうか。何故そこに●を入れるんだ。良い子は「っ」を入れましょうね。nとか入れちゃダメですよ。

 あくまでサブキャラですけどね、良くここまで無駄にキャラを作ったな、という感じの娘がイ=ウ。細くって、髪短くって、美少年みたいな可愛い外見の内には、何事にも全力で取り組んで、すぐに(陰ながら)行動にしてしまう真摯さと素直さ。頭のよさはぴか一、個性的ではあるけれど頑張りやさんが多いこの作品の中でも誰よりも真面目じゃないかといった感じの女の子。キャラも立ってて主人公を気にする女の子。いいじゃないか正ヒロインでも。
 といっても、こういうキャラはえてして一番手にはなれませんよね。
 確かに引き立て役としてとてもいい位置周りなのは確かです。物語が何か転換を迎えるとき、こういうキャラが間に入って主導する。正ヒロインがやってしまったら、それは物語上クライマックスになりかねません。正ヒロインの起こすイベントはエンディングまっしぐらなのです。今回の作品なら、旧共和制語の勉強会というのは、主人公レイチがクラスメイトと関係を深め、最後の展開へと持っていくための布石としては重要ですが、直接ラストに関係するイベントはやはりネルリ及び彼女の国シャーリックの人々の話。直接の引き金にはなれないんです。
 正ヒロインになれない、というのは、引き立て役としてちょうどいいということの他に、キャラは立っていても中途半端だからというのもあります。主人公に思いを寄せる、というのはいいですが、そのきっかけが図書委員の一目ぼれ的なもので、それならそれで、思いを伝えられなくてあたふたしていれば面白いかもしれませんが、あっさりすぎるほどにあっさりとラブレターなんか書いちゃってますし(やり方が電波的だけれども)。真面目さがマイナスになっているというのもありますね。読者が(特に現代的若者が)読んだとき、可愛いし、がんばってるけど、真面目すぎてめんどくさくないかなぁ? と考えてしまう可能性があります。この作品では特にそういう書き方がなされている気がしますし。
 まあ残念ながら正ヒロインとしては活躍できないであろう彼女ですが、ちょっと思ったのは、「委員長キャラ」として正しいのはこういう娘なんじゃないか、ということです。また機会があれば委員長については話すかもしれませんが、一般的にギャルゲーとかラノベとかで委員長と呼ばれる娘を考えるなら、「ツンデレ、時におせっかい、気が強い、きりっとしていて、でも内面はとても乙女」みたいな感じだと思います。テンプレ的な。でも実際委員長として一番頑張ってくれそうなのはむしろイ=ウのような娘じゃないかと思います。普段は穏やかで、皆に勉強を教えつつ、クラスの人がピンチだったらきっちり助けに入る。誇るときは誇り、怒るときは怒る。素直で真面目で一生懸命。でも自分が一番前には出ない。何て最高なんだ、と思うのは自分だけかな。

 とりあえず、話が長く続いてこの娘がいっぱい報われる日がきますように。